蹴りたい背中

蹴りたい背中


確かに、冒頭の7行は工夫が凝らされてると思う。
でも、この小説を私たちと大体同年代以外の人が読んで理解するのは、難しいと思う。
すんごく有名だけど、対象者が狭いなぁ。
これは、主人公の気持ちをすごくわかる人と、わからない人にぷっつり分かれるんじゃないのかな?
年配者には絶対分からなさそう。
文章が稚拙とか言われているけどさ、
これはこれで、現代の高校生事情を凄くよく書けてると思うんだけど…。
もう卒業してから何年か経つけど、あの時その時の気持ちとリンクして微妙に落ち込んだり。
芥川賞受賞が妥当だったかとかは私には判断付きかねるけど、
高校時代をまざまざと思い出す文章ははっきり言ってすごいと思うんだが、どうだ。
こんな風に思う小説、なかなか無いけどな。
高校生の事情を書いた小説って、ほとんどが嘘くさかったりいんちきくさかったり、
美化されすぎちゃってたり、イライラするものばっかりだから。(恩田陸とか...)
「世界が狭い」っていう批判もあるらしいけれど、
その世界の狭さも今の若者達の悩みを助長するひとつなのに。
これが理解できないようじゃ、現代の子供達の悩みなんて到底理解できないし、
解決なんてもってのほかですよ大人たち、って言いたくなる。
私もこういう気持ちや雰囲気を思春期に感じていたから。


この本に共感してる人がいるってことは、いやいや、むしろこんな本が書かれたってことは、
ハツ程屈折してなくても、やっぱり皆こんなことを考えながら毎日毎日を過ごしているのかしらん。
友情を維持するのも今の時代努力やお世辞が必要で、辛いよね。


ただなー、にな川はちょっとイマイチだったかも。オタクとしても軟弱で、キャラクターが弱いなぁ。
肝心の蹴りたい気持ちが、なんとも...。