宮沢賢治を創った男たち

宮沢賢治を創った男たち


宮沢賢治の研究本、と、いっても決して宮沢賢治を賞賛するものじゃなくって、
もっと冷静な観点で見ましょうって本。
この視点の部分については興味深く、
特に時代背景を知らないと本当の意味が分からない部分については、知る事ができて良かった。
グスコーブドリの伝記とか、「おおお!そんな面が!!」って感じたし。
ただ、私は宮沢賢治の作品を愛してはいるけれど、
本人の事を「立派だなぁ」とか、「偉いなぁ」とか、そういう偉人視点で見た事が無いので、
そういう部分はどうもピンとこなかったし、この作者はちょっと意地悪いと思う。


確かに宮沢賢治の作品が流布されるにあたっての人々の行動はあんまりだし、
酷い言い方をすると宗教染みたところすらあるけれど、
ブームの過程はどうであれ、結局作品がダメなら、一介の地方詩人の作品が
こんなに後世まで残るわけが無いと思う。ブームなんてそれこそ熱しやすく覚めやすい。
大体にして気に食わないのだったら、「じゃーなんで研究してんの??」ってなる。
宮沢賢治の作品は、勿論難がある箇所も多いし、それ以前に未完成の作品ばかりだし、
彼の思想についていけない人もいるだろう。
私だって、全部の作品が「素晴らしい!」とは思ってない。微妙だってのもある。
好きな人もいるし、嫌いな人もいる。でもそれって当たり前。
冷静に見るのは、良い。こんな面もあるんだぞってのは大歓迎。批判も良い。
けど、好きな人を見かねて「宮沢賢治ってこんなんなんだからさ…」
ってコソコソと水をさすように取れる書き方はちょっと捻くれてない?
大して読んだこともないのに賛辞を呈するのは、何も昔に限った事でも、
ましてや宮沢賢治だけの話でもなくて、今でも(むしろ今だから)珍しくも何ともない。
これは、宮沢賢治が好きだからとかじゃなくって、私がブーム全般に対して思う事なんだけど。
というわけで、この作者の態度だけが、苦笑というか、なんというか。