八月の博物館 (角川文庫)

八月の博物館 (角川文庫)


本書の言葉を借りるとすればいつもは「理系サスペンス」な作者が、
ちょっぴり新境地に乗り出したお話、なので今までとちょっと毛色が違う。
この小説、全体的にF臭(何ソレ)がする…と思っていたら
読んでいくうちに何となく分かってきて最後の1文で納得。
マリエットが亨達に会った時に呟く台詞なんかもうまんまF先生の影を感じますよね。(何
分かる人だけ分かって下さい。
対象年齢は…私より10歳位上の方々…かな?
特に藤子不二雄全盛期に小学生やってた人達。主人公は少年だけど。


ちょっと前に、
「皆さんに物語の感想を述べさせると、必ず作者の主張ばかり言うんですよね。
でも、本当に読んでほしいのは主張ではなくて情景なんです。」
って言われたの鷲巣の言葉で思い出した。
ドラえもんだって、世の中の評では道徳的な部分ばかりが目立つけど、本当にそうかな?


ただやっぱ某作家もそうなんだけど…
作者の事を小説の登場人物の口を借りて色々喋らせるって形式は
個人的にあんまり気分がいいものじゃない。
この小説のカラクリを考えれば、必要な部分だけど、それでも…。


色んな要素がつまった小説で、まさに博物館みたいでした。
こんな博物館があったらいいなあ、って夢見れた。博物館のシーンはとにかく良かったです。


最後に。「齧る」のところが…静岡弁のニュアンスじゃ?
手で齧るって普通おかしいよね。静岡では「手で掻く」を「かじる」っていうんです。